こんにちは。スポーツ・ダイジェスト・ネットの運営者のアキです。
メジャーリーグで活躍する日本人選手たちのニュースを見ていると、その桁違いの金額に驚かされることが多いですよね。
特に最近、シカゴ・カブスで投げる今永昇太選手の話題が気になっている方も多いのではないでしょうか。
今永昇太選手の年俸推移やカブスでの現在の契約状況について、ニュースだけでは少し分かりにくいと感じているかもしれません。
DeNA時代からの変化はどうだったのか、アメリカの税金を引かれた後の実際の手取りはどうなるのか、気になりますよね。
ネットの掲示板であるなんjや、海外の反応などでも、彼の契約の複雑さやランキングの位置づけについてよく議論されています。
今回は、メジャーリーグの少し難しい契約システムを、野球に興味がある一人のファンとして、世界一分かりやすく翻訳する案内人になったつもりで紐解いていきたいと思います。
一見すると複雑で難しそうな契約の話ですが、読み終える頃には「なるほど、そういうことだったのか!」とスッキリ理解できるはずです。
一緒に、今永選手の契約に隠されたドラマを楽しんでいきましょう。
- 今永昇太選手のカブスでの最新年俸とクオリファイング・オファーの仕組み
- 日本プロ野球(DeNA)時代からメジャーリーグへの驚くべき年俸推移
- 複雑と言われる初期契約の仕組みや実質的な手取り額のシミュレーション
- 複数年契約を捨てて単年契約を選んだ裏にある、超大型契約への前向きな戦略
今永昇太の年俸推移と複雑な契約
まずは、今永昇太選手が現在どのような契約状況にあるのか、そしてこれまでにどのような年俸の推移をたどってきたのかを順番に見ていきましょう。
彼の歩んできた道を知ることで、現在の契約がいかに規格外であるかがよく分かりますよ。
カブスでの2026年最新年俸とは
メジャーリーグのニュースを見ていると、時折耳慣れない専門用語が飛び交いますよね。
今永昇太選手の2026年シーズンの年俸について語る上で絶対に外せないのが、「クオリファイング・オファー(QO)」という言葉です。
結論から言うと、今永選手の2026年の年俸は単年で2202万5000ドル、日本円に換算すると約34億円(※為替レートにより変動します)という途方もない金額で確定しています。
これが、彼がカブスから提示されたクオリファイング・オファーを受諾した結果なんです。
クオリファイング・オファー(QO)とは?
メジャーリーグにおいて、所属球団がフリーエージェント(FA)になる選手に対して、あらかじめ決められた高額な単年契約を提示する制度のことです。
この金額は、その年のMLB年俸上位125選手の平均額から自動的に算出されます。
2026年シーズンのQOの規定額が、前年から少し上がって2202万5000ドルになりました。
今永選手はこのオファーを受け入れたため、この金額での単年契約が成立したというわけです。
実は、このQOという制度は、球団側からすると「主力選手を他球団に引き抜かれたときの保険」のような意味合いがあります。
もし選手がQOを拒否して他のチームと契約した場合、元の球団(この場合はカブス)には、ドラフトでの指名権が補償として与えられる仕組みになっているんです。
逆に言えば、QOを提示される選手というのは、「他球団に取られたくない、あるいは取られたら大きな痛手になる」と認められたリーグトップクラスの実力者だけなんですよね。
毎年、何十人もの選手がFAになりますが、このQOを提示されるのはほんの一握りです。
2025年のオフシーズンを見ても、提示されたのはメジャー全体でたったの13人しかいませんでした。
その中に今永選手が入っていること自体が、彼のメジャーでの評価がいかに高いかを物語っています。
そしてさらに驚くべきは、提示された13人のうち、このオファーを受諾してチームに残る選択をしたのはわずか4人だけだったということです。
多くの主力選手は、1年だけの契約よりも、3年、5年といった長期にわたる安定した契約を求めてFA市場に打って出るのが普通なんです。
それなのに、なぜ今永選手はあえて単年契約であるQOを受け入れたのか?その深い理由は、記事の後半でじっくり解説していきますね。
DeNA時代からの劇的な年俸推移
今でこそ年間数十億円という桁違いの報酬を手にしている今永選手ですが、プロ野球選手としてのスタート地点からの道のりを振り返ると、本当に感慨深いものがあります。
彼が日本プロ野球(NPB)の横浜DeNAベイスターズに入団したのは、2015年のドラフト1位でのことでした。
駒澤大学で活躍し、鳴り物入りでプロの世界へ飛び込んだわけです。
プロ1年目となる2016年の推定年俸は、1500万円(契約金は1億円)からスタートしました。
新人としては最高クラスですが、今の金額と比べると少し可愛く見えてしまいますね。
ルーキーイヤーから8勝を挙げて防御率2.93という素晴らしい成績を残し、翌2017年には年俸が4000万円へと大幅にアップします。
この年には11勝を挙げ、一気にチームの主力投手としての地位を確立しました。
苦難の時期と見事な復活
順風満帆に見えたキャリアですが、2018年には大きな壁にぶつかります。
エースとしての期待を背負って年俸8400万円まで上がったものの、この年は4勝11敗、防御率6.80という極度の不振に陥ってしまいました。
プロの世界は厳しく、翌2019年の年俸は6700万円へとダウンしてしまいます。
しかし、ここからが今永選手の本当の凄さです。
投球フォームや考え方を再構築し、2019年には13勝を挙げて劇的な復活を遂げるのです。
この復活劇が評価され、2020年にはついに年俸が1億3600万円となり、自身初の1億円プレーヤーの仲間入りを果たしました。
その後、左肩の手術などで苦しい時期もありましたが、2022年にはノーヒットノーランを達成するなど完全復活を印象付けます。
そして、日本での最終年となった2023年には、推定1億4000万円という自己最高額に到達しました。
WBCでの世界一貢献や、最多奪三振のタイトル獲得など、日本のエースとしての地位を不動のものにしたシーズンでした。
| 年度 | 所属チーム | 推定年俸 | 主要な成績・出来事 |
| 2016年 | 横浜DeNA | 1500万円 | ドラフト1位入団、8勝マーク |
| 2018年 | 横浜DeNA | 8400万円 | 極度の不振を経験 |
| 2020年 | 横浜DeNA | 1億3600万円 | 見事な復活で初の1億円突破 |
| 2023年 | 横浜DeNA | 1億4000万円 | 日本での自己最高額、WBC優勝貢献 |
| 2024年 | カブス | 900万ドル(約13億円) | メジャー移籍初年度 |
| 2026年 | カブス | 2202.5万ドル(約34億円) | QO受諾による単年契約 |
表を見ると一目瞭然ですが、DeNAでの最終年である1億4000万円から、メジャー移籍後の平均的な年俸への跳ね上がり方は尋常ではありません。
為替レートの影響もありますが、およそ13倍から24倍という、まさに天文学的な「ジャンプアップ」を果たしたことになります。
日本のプロ野球という国内市場から、メジャーリーグという世界最大のスポーツ経済圏へ足を踏み入れることが、いかに圧倒的な経済的価値の変化をもたらすのか。
今永選手の年俸推移は、その最も分かりやすい証明だと言えるかなと思います。
ジグソーパズル契約の仕組みを解説
さて、今永選手がメジャー挑戦を決め、シカゴ・カブスと契約を交わした際、アメリカの現地メディアからある言葉で表現されました。
それが「ジグソーパズルのように複雑な契約」という言葉です。
普通、プロ野球選手の契約といえば「3年で総額〇〇億円」といったシンプルなものを想像しますよね。
しかし、今永選手の初期契約は、球団側と選手側の様々な思惑が入り乱れた、非常にパズル的な構造になっていたのです。
まず、彼が渡米した際の「最低保証額」は、4年総額で5300万ドル(当時のレートで約77億円)というものでした。
これだけでも十分凄い金額ですが、内訳を見ると、契約金が100万ドル、2024年の基本年俸が900万ドル、2025年が1300万ドルという風に設定されていました。
そして、このパズルを面白くしているのが「サイ・ヤング賞エスカレーター条項」と呼ばれる出来高(インセンティブ)の存在です。
サイ・ヤング賞というのは、その年に最も活躍した投手に贈られる、投手にとって最高の栄誉です。
今永選手はメジャー1年目の2024年、なんと15勝3敗、防御率2.91という圧倒的な成績を残し、このサイ・ヤング賞の投票でナ・リーグの5位にランクインするという快挙を成し遂げました。
契約には「サイ・ヤング賞の順位に応じて翌年の年俸が上がる」という条件が組み込まれていたため、この条件を見事クリア。
結果として、2025年の基本給に25万ドルが加算され、実質的な年俸は約1325万ドルにまで跳ね上がったのです。
彼自身の実力で、パズルのピースを一つ埋めて価値を高めたわけですね。
相互オプションの複雑な駆け引き
この契約の最大の分岐点は、2025年のシーズン終了後にやってきました。
ここには、カブス側と今永選手側の両方に、契約をどうするか選択できる「オプション」が設定されていました。
カブス側には、契約をさらに延長して最大5年総額8000万ドルにするという「球団オプション」がありました。
しかし、カブスはこの権利を行使せず、破棄することを選びました。
すると今度は、今永選手側に「2026年を1525万ドルでプレーする」という「選手オプション」の権利が移ります。
しかし今永選手も、「今の自分の市場価値はもっと高いはずだ」と判断し、この権利を拒否(破棄)したのです。
お互いに選択肢(オプション)を破棄し合うという、まるでポーカーの駆け引きのような状況です。
この複雑なプロセスを経た結果、カブス側が彼を引き留めるための最終的なカードとして切ってきたのが、先ほど説明した「クオリファイング・オファー(QO)」だったのです。
日本の実績は十分でも、メジャーで通用するかはやってみないと分からない。
球団側はリスクを減らしたいし、選手側は活躍した分だけしっかり評価されたい。
そんな両者の思惑が複雑に絡み合った結果生まれたのが、このジグソーパズル契約だったんですね。
円安や米国税制での実質手取り額
「年俸34億円!」と聞くと、私たち一般人からすれば「一生遊んで暮らせるどころか、島が買えるんじゃないか」と想像してしまいますよね。
日本のメディアでも、この途方もない日本円換算の数字が大きく報じられます。
しかし、スポーツ経済というリアルな視点で見ると、この「34億円」がそのまま今永選手の銀行口座に振り込まれるわけではありません。
そこには、「円安の魔法」と「アメリカの厳しい税金」という2つの大きな壁が存在しているのです。
まず一つ目の「円安の魔法」についてです。
近年の急激な円安相場(1ドルが150円を超えるような状況)は、ドルで給料をもらうメジャーリーガーの報酬を、日本円に換算した際にものすごく大きく見せています。
仮に、数年前のような1ドル110円の時代だったとしましょう。
2202万5000ドルは、約24億2000万円になります。
もちろんこれでも物凄い金額ですが、現在の為替レートで計算した「約34億円」と比べると、見え方が10億円も違ってきますよね。
アメリカの専門家から見ても彼のドル建てでの価値は非常に高いのですが、日本人が感じる「34億円」という強烈なインパクトには、為替の変動というフィルターがかかっていることは知っておくべきかなと思います。
そして二つ目が、本当にシビアな「アメリカの税制と諸経費」の話です。
額面の金額から、どれだけのものが引かれていくのか、少し具体的に見ていきましょう。
※税金や経費に関する注意点
ここで紹介する税率や手取り額のシミュレーションは、専門家の一般的な試算モデルに基づく目安であり、正確な金額を断定するものではありません。
個人の控除額や細かい税法によって変動するため、あくまで「だいたいこれくらい引かれるのか」という参考としてお読みください。
- 連邦税(国に払う税金): アメリカの最高所得税率である約37%が適用されます。これだけでかなりの額が持っていかれますね。
- 州税・市税(地元に払う税金): カブスの本拠地はイリノイ州シカゴにあります。イリノイ州は約4.95%の州所得税がかかります。実はこれでも、大谷選手がいるカリフォルニア州(最高13.3%以上)やニューヨーク州に比べれば、スポーツ選手にとってはかなりマシな方なんです。
- ジョック・タックス(遠征先で払う税金): これがアメリカ特有で面白い(そして恐ろしい)制度です。メジャーは年間162試合の半分を他州で戦います。アメリカでは「試合をしてお金を稼いだ州」にも税金を払う義務があるんです。税金の高いカリフォルニア州やニューヨーク州へ遠征して試合をした日数分は、その高い税率が適用されてしまいます。
- エージェント費用: 今永選手の契約をまとめた敏腕代理人たちへの手数料です。一般的に契約総額の5%程度が相場と言われています。
これらをすべて差し引くと、実際に手元に残る「ネット・インカム(手取り額)」は、だいたい額面の45%から50%くらいに落ち着くと言われています。
つまり、2026年の年俸2202万5000ドルの実質手取り額は、およそ1000万ドルから1100万ドル(日本円で約15億円〜17億円)程度になるのではないかと推測されます。
「半分になっちゃうの!?」と思うかもしれませんが、それでも15億円ですからね。スケールが違いすぎます。
ちなみに、これだけの富を手にしながらも、今永選手は私生活ではとても堅実でお茶目な金銭感覚を持っていることで知られています。
過去にアメリカのメディアに対して、「シカゴでの日用品の買い物とか、球団の誰かが立て替えて買ってくれないかなぁ」と冗談交じりに話したことがありました。
メディアからは「年俸十数億円ももらってる男のユーモアだ」「自分で買えよ!(笑)」と突っ込まれ、現地のファンからさらに愛されるきっかけになりました。
こういう飾らない人間性が、彼の魅力の一つなんですよね。
カブス内の高額年俸ランキング
今永選手の2202万5000ドル(約34億円)という年俸が、チームの中で、あるいは日本人選手全体の中でどのくらいの位置にいるのかを確認してみましょう。
相対的なランキングを見ることで、彼への期待の高さがより鮮明になります。
シカゴ・カブスという球団は、メジャーの中でも名門であり、お金を持っている球団の一つです。
2026年シーズンのチーム全体の総年俸(ペイロール)は、約2億3000万ドルから2億5000万ドル規模になると予測されています。
そのカブス内での、2026年シーズンの推定年俸ランキング(上位トップ5)を見てみましょう。
| チーム内順位 | 選手名 | ポジション | 2026年 推定年俸 |
| 1位 | アレックス・ブレグマン | 内野手 | 3500万ドル |
| 2位 | ダンスビー・スワンソン | 内野手 | 2800万ドル |
| 3位 | 今永昇太 | 投手 | 2202万5000ドル |
| 4位 | イアン・ハップ | 外野手 | 1900万ドル |
| 4位(同率) | 鈴木誠也 | 外野手 | 1900万ドル |
なんと、大型補強のブレグマン選手、主軸のスワンソン選手に次いで、チーム内第3位の高給取りなんです。
ここで注目していただきたいポイントが2つあります。
1つ目は、カブスの「投手陣の中では単独トップの年俸」であるということ。
ジェイムソン・タイヨン投手(1800万ドル)などを抑えて、名実ともにエースとしての金銭的評価を受けている証拠です。
2つ目は、チームメイトであり、日本時代からのライバルでもある鈴木誠也選手の年俸(1900万ドル)を上回っているという点です。
鈴木誠也選手も5年総額8500万ドルという超大型契約を結んでいるスーパースターですが、単年の金額で見ると今永選手が上回る形になっています。
シカゴの地に、これほど評価される日本人デュオがいること自体が誇らしいですよね。
では、メジャーリーグ全体にいる日本人選手の中で見るとどうでしょうか。
もちろん、絶対的なトップに君臨しているのはロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手(7000万ドル)です。ここはもう別次元の話ですね。
しかし、それに続く第2位のポジションに、吉田正尚選手(レッドソックス、1860万ドル)や千賀滉大選手(メッツ、1500万ドル)らを抑えて、今永選手の2202万5000ドルが位置していると考えられます。
渡米したばかりの初年度は、「実力の割には少し安い契約で買い叩かれたのではないか?」なんて心配する声もありました。
しかし、今回のQO受諾による年俸アップで、名実ともにメジャーリーグのトップクラス(トップ・ティア)の評価を確立したと言って間違いありません。
今永昇太の年俸から読み解く未来
ここまで、現在の契約状況やお金のリアルな話をしてきました。
ここからは、なぜ彼が複数年の安定を捨ててまで単年契約を選んだのか、その裏に隠された驚くべき戦略と、未来への展望を読み解いていきましょう。
なぜ単年?QO受諾の歴史的決断
記事の最初の方で、今永選手が「クオリファイング・オファー(QO)」を受諾して単年契約を結んだと説明しました。
実はこれ、日本の野球ファンだけでなく、アメリカのメディアにも衝撃を与えた「日本人メジャーリーガー史上初」の歴史的な決断だったのです。
なぜ衝撃だったのか?それは、普通の一流選手はQOを受け入れないからです。
QOという制度が導入されて以降、これまで計144人の選手がこのオファーを提示されてきました。
しかし、そのうち受諾して単年契約を受け入れたのは、今永選手を含めてもたったの14人しかいないんです。
確率にすると10%未満の、極めて稀なケースなんですよね。
普通に考えれば、プロのスポーツ選手は怪我のリスクと常に隣り合わせです。
「3年で総額〇〇億円」といった複数年契約を結んで、将来の生活を安定させたいと思うのが人間の心理ですよね。
32歳という年齢を考えれば、なおさら長期契約を望むのが自然です。
FA(フリーエージェント)市場に出れば、複数球団による争奪戦が起き、もっと条件の良い長期契約をもらえた可能性だって十分にありました。
それでも今永選手と彼のエージェント陣営は、FA市場の波の中へ飛び込まず、カブスに1年だけ残留するという道を選びました。
一見すると「もったいない」「弱気な選択なのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、メジャーの契約システムを深く知れば知るほど、これが非常にクレバーで、高度な戦略的思考に基づいた決断であることが見えてくるのです。
オプション破棄の裏にある高度な戦略
彼がQOを受け入れるまでの流れをもう一度おさらいしながら、その戦略の意図を紐解いてみましょう。
まず、ジグソーパズル契約の中で、今永選手には「2026年シーズンを1525万ドルでプレーする」という選手側のオプション権利が残されていました。
もし「安定」だけを求めるなら、この権利を行使して、おとなしく1525万ドル(約23億7000万円)をもらってプレーすることもできたはずです。
しかし、彼は自らこの権利を破棄しました。「俺の価値は1525万ドルじゃない。
もっと高いはずだ」と市場にアピールしたわけです。
これを受けて、カブス側は彼を引き留めるために、2202万5000ドルのクオリファイング・オファーを提示せざるを得なくなりました。
結果としてどうなったか?
今永選手は、元々持っていた1525万ドルの権利を捨てたことで、約677万ドル(日本円にして10億円以上!)も金額を吊り上げることに成功したのです。
同じ1年間の契約であっても、自らの価値を正しく見積もり、ルールを最大限に活用することで、これだけの差額を生み出しました。
これはビジネスの視点から見ても、極めて合理的な経済的選択だったと言えます。
「だったらFAになって、他球団と長期契約を結べばもっと稼げたのでは?」という疑問が残りますよね。
そこで絡んでくるのが、メジャーリーグを取り巻く「ある深刻な問題」なのです。
労使協定の失効リスクを賢く回避
ここが、今回の決断の最も大きな理由の一つではないかと言われている部分です。
少し難しい話になりますが、できるだけ分かりやすく説明しますね。
メジャーリーグには、機構(オーナー側)と選手会(選手側)の間で結ばれている「労使協定(CBA)」という重要なルールブックがあります。給料の仕組みやFAのルールなど、すべてがこの協定に基づいて運用されています。
実は、現在のこの労使協定は、2026年の12月1日に期限切れ(失効)を迎えることが決まっているのです。
労使協定失効の恐怖:ロックアウトとは?
新しい協定を結ぶための交渉は、お金が絡むため毎回ものすごくモメます。
もし期限までに話がまとまらないと、オーナー側が施設を閉鎖する「ロックアウト」という強硬手段に出ることがあります。
これが起きると、FA市場での交渉が一切ストップし、選手の移籍が完全に凍結されてしまうんです。
前回の交渉時にもこのロックアウトが発生し、大混乱を招きました。
今永選手の陣営は、この「不確実性」を非常に嫌ったのだと推測されます。
もし今オフにFAになって長期契約を探そうとしても、各球団のオーナーたちは「来年オフに労使協定がどうなるか分からないから、今の段階で長期の大型投資は控えたい」と財布の紐を固くしてしまうリスクがありました。
そんな冷え込んだ市場で無理に交渉するよりも、確実に高額(2202万5000ドル)が保証される単年契約で一旦リスクを回避(ヘッジ)し、労使協定のゴタゴタがどうなるか様子を見る。
これは、大荒れの海に無理やり船を出すのをやめて、安全な港で一旦様子を見るような、非常に賢いリスクマネジメントだったと言えるでしょう。
最新投球データが示す費用対効果
さて、賢い戦略で年俸約34億円を勝ち取ったわけですが、プロの世界は結果がすべてです。
球団からすれば、「34億円払う価値のある働きをしてくれるのか?」という費用対効果(コストパフォーマンス)が最も重要になります。
結論から言うと、今永選手はその巨額の投資に十分見合う、いや、それ以上のパフォーマンスをマウンドで証明し続けています。
2026年シーズンの前半戦(4月〜6月)の投球データを少し覗いてみましょう。
- 4月15日 フィリーズ戦:6回を投げて被安打3、11奪三振、失点1で勝利
- 5月2日 ダイヤモンドバックス戦:7回を投げて被安打4、無失点で勝利
- 5月7日 レッズ戦:6回を投げて被安打6、10奪三振、失点1で勝利
このデータから明確に読み取れるのは、彼の最大の武器である「圧倒的な三振を奪う能力」です。
彼の投げるストレート(フォーシーム)は、手元でホップするように浮き上がる特有の軌道を描きます。
これを専門用語で「IVB(ホップ成分)が高い」と言ったりしますが、このストレートがメジャーの屈強な強打者たちから面白いように空振りを奪うのです。
もちろん、人間ですから調子の悪い日もあります。
5月中旬の試合では、4回や6回で7〜8失点と打ち込まれてしまう試合もありました。
しかし、そんな不調な時でも、彼は途中で試合を投げ出さず、なんとかイニング(投球回)を稼ごうと粘り強く投げ続けます。
メジャーの過酷な連戦において、先発投手がしっかりとイニングを食ってくれる(イニング・イーターになってくれる)ことは、中継ぎ投手の負担を減らす意味で、
首脳陣からめちゃくちゃ高く評価されるポイントなんです。
三振が取れて、試合を作れる(クオリティ・スタートが計算できる)。
現地のメディアが「彼の安定感こそが、カブスがワールドシリーズに進出するための鍵になる」と手放しで絶賛するのも納得のコストパフォーマンスを見せつけています。
今永昇太の年俸に隠された前向きな戦略
ここまで、今永昇太選手の年俸にまつわる様々な側面を見てきました。
最後に、この記事の結論として、彼の契約戦略がいかに素晴らしいものであるかをまとめたいと思います。
表面的なニュースだけを見ると、「複数年の延長オプションをカブスに破棄されてしまい、仕方なく1年契約になったのか?」と、少しマイナスなイメージを持ってしまった方もいたかもしれません。
しかし、契約の仕組みやメジャーリーグの背景(労使協定のリスクなど)を紐解いていくと、まったく逆の景色が見えてきましたよね。
彼は決して「仕方なく」1年契約になったわけではありません。
自らの意思で低い金額のオプションを蹴り、自らの価値で最高額のオファー(QO)を引き出したのです。
なぜ彼がこのような強気な交渉ができたのか。
それは、彼自身が「自分の技術と実力に対する絶対的な自信」を持っているからに他なりません。
DeNA時代に不振や怪我で評価が乱高下する苦しみを味わいながらも、自身の投球メカニクスを徹底的に磨き上げてきた経験が、彼を強くしています。
「今年1年、再びサイ・ヤング賞レベルの圧倒的な成績を残してみせる。
そうすれば、33歳になる来年のオフには、今よりもさらに巨大な超大型契約をFA市場で勝ち取ることができるはずだ」
今回の単年契約は、そんな強い決意が込められた、極めて合理的で知的な「自身への再投資(セルフ・ベット)」なんです。
一見するとマイナスに見える状況を、持ち前の適応力と頭脳、そして圧倒的な実力によって「自分に絶対的に有利な状況」へと引っくり返してしまった今永選手。
彼のこの戦略的なアプローチは、今後メジャーリーグに挑戦する若い日本人選手たちにとって、グラウンドでのプレーだけでなく、ビジネス・マネジメントの面でも最高のお手本(ケーススタディ)になることでしょう。
風の街シカゴで、背番号18を背負って躍動する「昇る左腕」。
2026年シーズンのマウンドで彼がどんなピッチングを見せ、自らの価値をいくらまで高めていくのか。
私たち日本のファンも、そして世界のスポーツ経済市場も、彼から目を離すことはできそうにありません。
今回は少し専門的な用語も登場しましたが、メジャーリーグの奥深い世界を楽しんでいただけたなら嬉しいです。
これからも一緒に応援していきましょう!
スポーツ・ダイジェスト・ネットのアキがお届けしました。
